下部消化管グループ
大腸がんなどの大腸疾患に対し
積極的に腹腔鏡手術を行っています。
当科では、大腸がんなどの大腸疾患に対し積極的に腹腔鏡手術を行うようにしています。図1に示すように、年々大腸の手術件数は増加しており、その中で腹腔鏡手術の比率が高くなってきています。2018年には86%の症例に腹腔鏡手術が行われました。
図1 大腸切除手術件数
腹腔鏡下大腸手術の成績
当科の開腹移行率(腹腔鏡手術をあきらめて開腹となる確率)は、過去5年間で3.7%です。縫合不全(腸を縫い合わせたキズがうまくくっつかないこと)や腸閉塞など患者さんにとって大きな負担となる合併症も年々減少してきており、最近では数%以下の発生率です。難度の高い手術(肛門近くの直腸癌の切除・吻合など)を積極的に行い、いろいろな余病(糖尿病・腎疾患・心疾患など)を抱えた患者さんの手術が増加しているにもかかわらず、手術に関連する死亡率は0%を維持しています。私たちは手術による合併症をさらに減らすよう日々努力と工夫を重ねています(図2)。
図2 当科における腹腔鏡下大腸切除術の成績
(2015/1月~2019/12月)
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
---|---|---|---|---|---|
症例数 | 101 | 109 | 133 | 167 | 111 |
開腹移行(%) | 7.9 | 3.7 | 1.5 | 1.2 | 6.3 |
縫合不全(%) | 4.0 | 3.7 | 4.5 | 1.2 | 0.9 |
腸閉塞(%) | 11.9 | 10.1 | 7.5 | 2.4 | 2.7 |
手術死亡(%) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
大腸がんに対する治療
私たちは「がん」の根治性を十分に意識し、腹腔鏡手術といえども、開腹手術と同程度にがん病巣と周辺リンパ節の切除を行います。技術的な難度の高い直腸・横行結腸・下行結腸の病変に対しても相当数の腹腔鏡手術を行っています。腹腔鏡手術では開腹手術よりも良好な視野が得られる(よく見える)ため、より精緻な手術ができると考えています。
最近、直腸がんに対してロボット手術を導入し、さらに精度の高い手術を目指しています。また、直腸がんに対する肛門温存手術も積極的に行っています。肛門温存手術を希望の際は一度ご相談ください。
炎症性腸疾患に対する治療
潰瘍性大腸炎、クローン病に対しての手術を消化器内科と連携して行っています。潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘は腹腔鏡下で行っています。クローン病に対する肛門病変に対しての治療も近年増加傾向です。(図3, 図4)
図3 潰瘍性大腸炎に対する腹腔鏡下大腸全摘術
図4 潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘術後の回腸嚢肛門吻合
大腸憩室症に対する治療
大腸憩室というのは、一部の大腸の壁が外にふくらんで袋のような形になる病態です(図5)。治療が必要になるケースは多くないのですが、時として、それが原因で穿孔(孔があくこと)、出血や狭窄が生じた場合は、手術などの治療が必要になります。憩室症に対する腹腔鏡手術の難度は高いですが、当科では積極的に低侵襲手術を行うようにしています。
図5 憩室症